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複視について 5

複視とは一つのものが二つに見える現象です。

複視の事例 5

50代のE様
「3、4日前から物が二重に見える。朝起きたら二重の世界だった。
眼科、脳神経外科を受診したが異常なしとの診断だった」

カバーテストでは、上下方向、水平方向に大きな眼位異常が確認できました。
 

・ カバーテスト

眼位ズレの検査に用いています。

斜位があるのかどうか
斜位なのか斜視なのか
眼位ズレの方向は
など、カバーテストは*両眼視の状態や異常を知る上で欠くことのできない検査です。

両眼視とは
両眼を使って、あたかも一つの眼で物を見ているように感じる機能です。
同時視、融像、立体視、深径覚などの機能があります。 
近視、乱視度数のチェックをして、眼位(視軸の向き)検査をしてみると、
左眼上斜位 R 10△B.U.
内斜位 8△B.O.
でした。

これぐらいの眼位ズレがありますと、複視になるはずです。
複視は大変な苦痛を伴い、日常生活や仕事、車の運転にも支障をきたします。

E様の場合、問題は「急に複視になった」ことです。
この場合、なんらかの原因で外眼筋麻痺が起こっている可能性が高いです。

外眼筋麻痺の原因は、外傷が多いので、E様にお尋ねすると「それは、ありません」と。
他に原因として、血管性病変、腫瘍、動脈瘤、炎症などがあり、薬の副作用なども考えられます。
それらの事もお尋ねすると「そういうこともありません」とおっしゃいました。
ただ、「手の震えをおさえる薬は、服用していますが、それは2年ぐらい前から飲んでいますから」とのことでした。

病院では異常ナシの診断だったので「原因が特定できない外眼筋麻痺」と考えるしかありません。

今回、下記の度数でプリズム入り遠近両用メガネを調製することになりました。
R S−1.25D C−0.50D Ax90 ADD2.00 5.0△B.U. 3.5△B.O
L Sー1.50D              ADD2.00 5.0△B.U. 3.5△B.O.

が、しかしこのレンズは、メーカー特注になり、仕上がりまでに1週間かかります。
その1週間は複視になっているE様にとっては、大きな苦痛になりますから、その間、テストフレームにプリズム入りレンズをセットして、掛けていただくことにしました。

1週間後、メガネを受け取りにお越しいただきました。
「お待たせしました。これで楽になります」とメガネを掛けていただきますと「ウウウ、物が二つに見えます」と。
眼位確認検査をしてみると、
左眼上斜位 R 5△B.U.
内斜位 8△B.O.
になっています。
1週間で大幅に上下斜位が少なくなっています。
これでは、10△B.U.は掛けられません。(テストレンズでも複視になっていました)

今回の斜位量でメガネを作り直す方法もあるのですが、再度眼位が変動する可能性が高いと思いました。
それで、今回検査の斜位量をセットしたテストレンズで様子を見ていただくことにしました。

手作りの「簡易眼位測定グッズ」もお渡ししました。
 
簡易眼位測定グッズ

斜位があるかどうか。斜位の方向、斜位量などが、ご家庭で測定できます。 
当店でメガネをお買い上げのかたにはサービスしています。(ご希望のかたに)

説明書付きです。
1週間後、
コの字検査、十字検査、時計テスト、個視点付十字検査、カラーテスト、すべて正常値(斜位がない状態)になっています。
近見眼位も正常です。(2.5m検査では、やや斜位が検出されました)
ほぼ、2週間で眼球運動障害が完治しました。

この時点で、E様から「そういえば、ズレ発生の3日前から強い風邪薬を飲んでいました。それが原因かも」とおっしゃいました。
「あ、それそれ、それが原因の可能性が高いです!」
震えを止める薬との併用で、副作用も当然強くなりますから。

再度、屈折度数も検査しました。
「両眼開放屈折検査」での基本度数は、
R S−1.25D C−0.50D Ax85
L Sー1.50D C−0.25D Ax85
でした。
屈折と眼位も連動していますから、眼位の変化によって屈折も変化していました。

この度数で、メガネを作り直すことにしました。

そして、また1週間後、
「日に日に、良くなっている感じがありました」とE様。
この時点でも眼位の確認をしてみますと、まったく問題ありません。
眼球運動も正常です。

めでたし、めでたし(^^♪
 
調製したプリズム入りレンズ(右レンズ)
ベースアウトプリズムとベースアッププリズムが入っています。

かなり厚いレンズになります。
加工もやや難しくなります。 
  
プリズムなしレンズ
上の写真と同じ度数で、プリズムなしレンズでこれだけ薄く軽くなります。
今回、プリズムなしレンズで調製することができました。

よかった、よかった(^^♪

日本眼鏡技術者協会のテキスト本には、
眼球運動麻痺では、自然治癒する例があり、発病後6ヶ月間は経過を観察するのが良いとされている。報告によると219例のうち経過観察中に自然治癒した例が23例(11%)あり、47・8%が2ヶ月以内に、91.3%が6ヶ月以内に治癒したとある」
と書かれていました。

私が疑問に思うのは、E様はまず眼科、脳神経外科を受診されているのに、病院からはなんのアドバイスもなく「検査結果は異常なし」で結果的にE様を突き放したことです。
途方に暮れかけたE様は、ネットで当店を探り当て「この複視が、プリズムレンズでなんとか改善できますか」とご来店されました。

病院は「異常がないから心配しなくていいよ」だったのかも知れませんが、診断で異常がないのに肉体には大きな異常がある状態は、患者さんにとっては大きな不安になります。
その不安が、益々眼筋麻痺を悪化させた可能性もあったのではないでしょうか。

急に複視になった場合、眼科が脳神経外科を紹介するのはわかるとしても、眼科は「複視を解消するための光学的対応として、プリズム眼鏡の選択もあります」とアドバイスをしておけば、E様は少しでも安心したでしょう。

脳神経外科は、もっと問診を丁寧にしておけばよかったのではないでしょうか。
原因不明の外眼筋麻痺があるとしても、なんらかの要因がある可能性が高いわけですから。

E様が「そういえば、風邪薬を」とおっしゃったのも、私が何度も「なんらかの原因があるはずです。たとえば寝違えたり、どこかで頭を打ったり、はたまた強いストレスにさらされたりとか」原因追及をE様に促したので、それで「ひょっとしたら、風邪薬が」と薬の重複に思い至ったわけです。

E様とすれば、風邪薬の影響などまったく想定外だったので、複視には戸惑うばかりでした。

今の日本の医療体制では「病気は診るけど、人間は診ない」面があるのは仕方がないでしょうか。


私の知人の薬剤師さん(いきつけの薬局)に、外眼筋と薬に関連することを訊いてみました。
「震えをおさえる薬と風邪薬には、両方に鎮痛消炎剤が入っている可能性があります。重複すると作用が強すぎて一時的な麻痺を起す可能性が考えられます。その時に、体調不良やストレスが加わると、よりその可能性が強くなります」。

E様の眼筋麻痺の原因が薬の重複と断定できたわけではありませんが、その確率は90%ぐらいでしょうね。
E様も「それしか考えられません」とおっしゃっていました。

薬剤師さんは「こういう薬が原因の麻痺は、2、3ヶ月続くことがあります」と云っていましたが、今回は短期間で改善することができました。
これは、「プリズム眼鏡」の効果もあったと考えられます。
・プリズム眼鏡で、複視が解消できることがわかった。
・実際に複視が解消された。
・プリズム眼鏡で、眼位を整えた。
心理的にも身体的にもプラス要素になったはずです。

もし、E様が複視のまま2、3週間過ごされていたら、どうなっていたか。
その間、仕事も正常にできません。車の運転もできません。歩行も困難になります。
精神的に参ってしまいます。

また、半年ぐらいすると、抑制が起こる恐れもあります。
抑制が起きると、複視はなくなるのですが、人間の眼にとって大切な両眼視ができなくなります。
こちらをご覧ください→「抑制
   

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